パン作りと水の関係
パン作りにおいて水は不可欠な材料であり、特に小麦粉に含まれる成分を働かせるために重要な役割を担っています。
デンプンの糊化(こか)
小麦粉のデンプンは、水とともに加熱されることで水を吸収し、糊化します。この糊化によってデンプンは柔らかくなり、人が消化できる状態になります。
グルテンの形成
小麦粉に水を加えてこねることで、たんぱく質(グリアジンとグルテニン)が水を吸収し、グルテンへと変化します。グルテンはパンの骨格を作り、ふくらみや弾力を生み出します。
その他の働き
水は塩や砂糖などの材料を溶かすほか、イーストや酵素を活性化させる役割も果たします。これにより、発酵が進み、パン独特の香りや風味が生まれます。
水の主な役割
- 小麦粉をまとめる
粉と水が混ざることで生地が形成されます。 - グルテン形成を助ける
小麦粉中のグリアジンとグルテニンが水を吸収し、グルテンを作ります。 - 酵母の働きをサポート
酵母が発酵するために必要な環境を整えます。 - 生地の状態を調整
加水量によってパンの仕上がりがふんわりしたり、どっしりしたりと変化します。
加水率とパンの種類
パン作りでは、小麦粉に対して加える水の割合を 加水率 と呼びます。
- 低加水(55〜60%前後):ハード系パン(バゲット、カンパーニュ)
- 中加水(65〜70%前後):食パンやテーブルロール
- 高加水(75%以上):フォカッチャやチャバタなど、水分を多く含むしっとりパン
水温の管理
パン作りでは水温も重要です。発酵の進み具合は生地温度で決まるため、水温を調整することで発酵のスピードをコントロールできます。
目安:
- 春・秋:20〜25℃程度
- 夏:氷水を使用して18〜20℃程度
- 冬:30℃前後のぬるま湯を使用
水質による違い
日本の水道水でも十分に美味しいパンを作ることができます。また、市販のミネラルウォーターを使用しても問題なく仕上がります。
ただし、水の 硬度(カルシウムやマグネシウムの含有量) や pH(水の酸性・アルカリ性) はパンの仕上がりに影響を与えます。パン作りに適した水を選ぶことで、生地のまとまりや発酵の進み具合、食感に違いが出ます。
軟水(硬度100mg/L未満)
生地がやわらかくなり、ふんわりとした仕上がりに。日本の水道水は軟水が多く、食パンや菓子パンに向いています。
硬水(硬度100mg/L以上)
グルテンが強くなり、しっかりした食感に。ヨーロッパのパン(バゲットやハード系)に適しています。
pHの影響
中性に近い水が一般的に扱いやすく、発酵や風味に安定した効果をもたらします。
まとめ
水はパン作りにおける「見えないけれど大切な材料」です。加水率・水温・水質を理解し調整することで、パンの食感や風味を思い通りに仕上げられます。